大人になって発達障害があると分かった場合、これまでの一般就職のための就職活動しか経験がないと、どのように自分の障害にあった就職先をみつけたらよいのかわからないことがあります。
そのようなときは、自分の障害に理解を深める機会を得たり、障害者雇用で就労する・障害に理解のある環境で働くために支援機関を利用していくこともできます。
その支援機関の1つに「就労移行支援」を行っている事業所に通所しながら就職ををめざしていく方法があります。
今回は、
大人の発達障害。就労移行支援を利用する手順とメリット。
と題してご紹介していきます。
私は、就労移行支援の事業者でも、専門の医療機関に勤める者でもありません。ただ、41歳のときに長年生きづらさを抱えていた原因が自閉スペクトラム障害(ASD)があるからでもあったことが専門の医療機関の検査を受けてわかり、現在は就労移行支援の事業所に通所し障害者雇用での就職を目指しています。自分の経験を踏まえてご紹介させていただくことで皆様の参考になると幸いです。
大人の発達障害 就職のために就労移行支援を利用する
就労移行支援とは
就労移行支援とは、就労系障害福祉サービスの1つです。
厚生労働省ホームページには、下記のように
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがあります。
・就労移行支援
厚生労働省ホームページより mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html
就労を希望する障害者であって、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
とあります。
”就労移行支援”は、”一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者”とあり、私の通所している就労移行支援事業所の様子をみると、重度の障害をお持ちの方は少なく、うつ病などが原因で離職した方が再就職を目指したい、障害がある方の中でも一般企業へ障害を開示して(障害を開示しない選択肢もあります)で就職を目指したい方などが利用される傾向があるようです。
私が就労移行支援を利用するに至った経緯
以前から発達障害があるのではないかと感じていたので、転職を機に、今後の人生を生きやすくしたり働きやすくしていくために専門の医療機関で発達障害の検査をうけました。
その結果、自閉スペクトラム障害(ASD)であることが分かったことがきっかけでした。
このとき、もう41歳。これまでの20年程度の社会経験を振り返り、過去の数回の転職の原因になった根本には、発達障害によるコミュニケーションエラーや人間関係の構築の難しさなどがあると感じました。今後は本当に自分に合う仕事や障害を理解される中で働きたいという思いから、「障害がある事を開示して働く」ことも視野にいれて転職活動をしようと「就労移行支援」の事業所を利用させていただくことにしました。
私が住む地域には、この1-2年でも就労移行支援の事業所が増えていましたので、「○○(地域名) 就労移行支援」とネットで検索し、気になった4-5か所の事業所に連絡して、その事業所の特徴などをしるために就労相談と予約して施設を訪問し見学したり授業の体験をさせていただきましました。その中から自分に一番合うと感じた事業所に通所したいことを伝えました。
就労移行支援は、自分が利用したいというだけで利用できるわけではありません。
私の場合は今回はじめて発達障害があると診断されたので、発達障害の検査を受けた医療機関で「医師の意見書」を取得し、就労移行支援事業所を介して自分の住む地域の福祉センターに相談にいき、そこで就労移行支援を受ける必要がある状態が認められることで、その就労移行支援の事業所に通所できるようになりました。
就労移行支援は、就労系障害福祉サービスなので通所にかかる費用は本来の金額よりも補助していただけるため、このような手順を踏む必要がるのだと思います。
参考記事:大人の発達障害。仕事の得意・不得意を見つける4つの方法
就労移行支援の利用対象者とは
厚生労働省のホームページによると
・就労移行支援
厚生労働省ホームページより mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html
就労を希望する障害者であって、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
と記載があります。
就労移行支援は、様々な背景やニーズを持つ個人が利用でき、一般的には、以下のような方々が利用対象とされているようです。
発達障害を抱える個人
発達障害の程度や種類に応じて、自分の能力に合った職場での就労のサポートを必要とする方。
精神疾患を抱える個人
うつ病、統合失調症、不安障害などの精神疾患を抱える人々が、安定した雇用状態を築くため。
身体障害を抱える個人
身体的な障害がある場合でも、適切な職場適応やトレーニング、就労先への理解を通じて、就労への手助けが必要な方。
就労に困難を抱える若者
初めての職場に適応するために、キャリアの選択やスキルの向上に関するサポートを必要とする学生や若者。
雇用の安定が難しい人々
就労において特別なサポートが必要な方、例えば、障害や精神疾患なども含め何らかの原因で雇用歴が不安定である人や雇用の維持が難しいと感じる方々。
就職のために”就労移行支援”を利用する7つのメリット
就労移行支援を利用して就職を進める場合、個人差はありますが最低数ヶ月から就職するまでに期間を要します。
そのため、
・とりあえずすぐに就職先を決めたい方
・無職状態で就労移行支援に通所すると生活に困る方
(生活保護を受けていたり、家族と一緒に住んでいれば生活支援を受けることができますが、一人暮らしで貯金がないなどで現状の生活が保てない方)
には、就労支援移行を利用することは向かないかもしれません。
ただ、就職するために就労移行支援を利用するメリットは以下の7つのようなものがあります。
個別のサポート
就労移行支援は(その就労移行支援事業所の方針・カリキュラムなどにもよりますが)、個々のニーズに合わせたサポートを提供してくださいます。発達障害や精神疾患の症状・生活リズムの崩れ・7就労スキルなど個々の現状に応じて、個別カウンセリングやトレーニングをしてくださいます。
スキルの向上
就労移行支援のカリキュラムでは、職場で必要なスキルや行動を向上させるためのトレーニングを提供してくださいます。
就労移行支援の事業所ごとに特徴やカリキュラムなどは違いますが、まずは週5日通所を目指して就職の基礎を整えたり、Excel・Wordなどのパソコンスキルを習得したり、コミュニケーションスキルを学ぶことを提供されている場合が比較的多いです。
適切な職場のマッチング
就労移行支援は、現状や障害の程度を理解してくれる労働市場の紹介や個々の強みや興味に基づいて適切な職場を見つける手助けをしてくださいます。このサポートにより、最初は障害者雇用について知識がなかったりして自分だけでは就職活動を進めにくくても、ご自身の状態に合う・希望に沿った環境で働く可能性を高めていくことができます。
労働環境への適応の支援
就労移行支援は、新しい労働環境に適応するための支援もしてくださいます。就労するために必要な基本的なビジネススキル・コミュニケーション術・ソーシャルスキルトレーニング(SST)・ストレスマネジメント・時間管理術・会社や社会についてなどをカリキュラムの中で組まれている事業所もあります。
”就職すること”だけが目的ではなく、その後にその企業で働き続けるために必要なスキル習得のための支援をしてくださいます。
雇用主との連携
就労移行支援は雇用主(企業)との連携を通じて、就職までの進行をサポートします。雇用主に対して、発達障害や精神疾患などに対する理解を促進し、採用前や採用後も関りながら会社で就労していくための適切な調整が行われるようにサポートをされます。
たとえば、企業が障害者雇用を行う場合、一番気になるのは「安定して就労ができるか」ということだと聞きました。
就労移行支援に通所するということは、ご自身の判断ではなく、第三者(就労移行支援事業者)が通所者が(障害者雇用であったとしても)一般就労が可能なレベルに現状がひきあげられているかを判断してくれます。そして、就労可能な状態であれば、これまでの通所履歴を通してその現状を企業に伝えてくれることで就労支援をしてくださいます。
就職意欲の向上
個別面談や就業に必要なカリキュラムを受け適切なサポートを受けることで、障害者雇用などの知識を得たり、就業意欲と可能性をたかめることを助けてくれます。
精神的な健康の安定
就労移行支援が提供するサポートの中で事業所に通所することにより、精神疾患や発達障害に関連するストレスや不安が軽減されやすくなる可能性があります。
最初から週5日の通所は難しいなどの方も、就労移行支援のスタッフに自分の現状を理解していただいたり相談していきながら、就労のために個別に調整し目標をたてて進めていくことができます。
また、一般就労であっても、一人で就職活動をしていくことは(現在は転職エージェントなどいくつもの転職サポートはありますが)、孤独にもなりやすく大変な面もあります。
障害者雇用やなんらかかの配慮を求めた就職を目指す場合には、一般就労よりも狭い求人を探したり、自分の障害などに合う環境の仕事を探していく必要があるため、就労移行支援の職員がサポートしてくださることは心強い面もあると思います。
*ただし、就労移行支援の事業所にはいろんなタイプや特徴、その事業所の方針があります。
私も今回通所している就労移行支援の事業所を選択するまでにいくつかの就労支援事業所見に就労相談をし実際に出向いて見学させていただきましたが、もう何年もされていて経験豊富なスタッフがサポートしたりカリキュラムが充実している・実際に就職実績があるところもあれば、この1年でできたばかりでまだカリキュラムもきちんと決まっていない・就業者も出していないという事業所もありました。
また、その事業所の雰囲気も様々で、「企業への就業を目指しているのだから事業所を”ミニ会社”として通所してもらう」という体制で運営され社会性を教えていただける体制のところもあれば、スタッフさんがTシャツなどのカジュアルな服装で対応されている事業所もありました。
ご自身にとって合う・通所しやすい雰囲気を選ぶことも大切です。また、就職形態がテレワークの就労になったとしても、就労移行支援では”企業に勤める”ことを目指している場所なので、個々へのサポート体制が充実しており、スタッフさんやその事業所を通して社会性を学ぶ・そこでの支援体制やカリキュラムの充実しているところを選ぶことも大切ではないかと思います。
また、私が訪問したなかでは、「ITに特化している」就労移行支援事業所さんでは、「プログラミングなどを理解する必要があるので知的障害程度の高い方はあまり向かない」というお話も聞きましたので、就労移行支援の事業所を選択するときにはご自身の知的レベル・障害に合う就労移行支援事業所を選んでいくことはも大切かもしれません。
就労移行支援を利用するための手順
就労移行支援を利用するためには、以下の一般的な手順があります。
下記の就労移行支援事業をされているチャレンジド・アソウさんのサイトもとても分かりやすくご紹介されていたのでご覧になってみてください。
チャレンジド・アソウさん ホームページより
今回は私の踏んだ手順をご紹介します。
*ただし、具体的な手続きは地域などで異なるため、詳細な情報は通所したい就労移行支援事業所や福祉機関などに直接問い合わせることをお勧めします。
- ステップ1就労相談と施設見学をし利用したい就労移行支援事業所を決める
決めた事業所に利用したい趣旨を伝え、利用開始までの手順を確認しサポートを依頼しましょう。
*場合によってはステップ1と2は逆になります。 - ステップ2医師の診断書 又は 意見書 の取得
発達障害や精神疾患の意見書(又は診断書)を専門の医療機関で取得します。これは、支援を受けるために必要な証明書となります。
- ステップ3地域の福祉サービス機関へ訪問予約
ステップ1で就労支援事業所に相談をしていれば、医師の意見書(診断書)が取得でき次第、地域の福祉センターなどに来所予約をしてくださるのではないかと思います。
- ステップ4地域の福祉サービス機関へ訪問
取得した医師の意見書(診断書)などを持参し、福祉サービスの担当と面談。自分の現状を伝えたり、聞き取り調査に回答したり、申請に関わる書類を記載したりします。
- ステップ5申請が通れば、就労移行支援事業所の利用開始へ
申請が通れば、正式に就労移行支援事業所と契約をして通所開始となります。
- ステップ6”障害福祉サービス受給者証”を受け取る
ステップ4で専門の福祉サービス機関への申請が通れば、1-2週間程度で”障害福祉サービス受給者証”が発送されるので受取りましょう。
この受給者証は、通所する就労移行支援の事業所へ一度提出しました。(コピーで控えをとられるようです。)
まとめ
今回は、
大人の発達障害。就労移行支援を利用する手順とメリット。
と題してご紹介させていただきました。
アラフォーになって自閉スペクトラム症(ASD)と診断されたことで大人の発達障害となり、健常者として働くことから障害者雇用で働くことに切り替えをしている私の経験を踏まえてご紹介させていただきました。
一般就労での転職経験はある私ですが、初めて”障害者雇用”で働いていくことを目指すためには、”就労移行支援”という場所を利用させていただくメリットは大きいと感じています。
皆様の参考になると幸いです。
最後に
障害があると分かったとき、ご自身の希望に応じては、職場などに障害を開示して理解を求めることで働きやすくしていくこともできます。
一般的に転職支援機関で有名なdodaさんでは、
として、障害特性に合わせた転職支援もされています。
大手・優良、外資系、ニッチトップ企業まで幅広い求人をもち、 障がいの種類(身体・精神・知的)も幅広くサポートされていますのでまずは登録されてみてください。
(障害者手帳申請中でも登録はできます。事前に登録しておき手帳を取得でき次第、障害の等級などを登録し、転職サポートを開始できます。)
大手企業は福利厚生がよいのも魅力。障害者雇用枠やその企業の特例子会社に雇用されるとその企業の福利厚生が一般の従業員と同様に適用される場合があると聞きます。もちろん、その企業の方針や個々の障害に応じた契約状況も関係しますが、大手企業に就職を目指すことは”障害者”であることを上手に活用して労働条件のよい就職をする1つの方法になるかもしれません。
また、
障害だけでなく、ストレスで体調を崩してしまって通常の就活ができない・うつ病などの疾患を患った場合などの時は「就労移行支援」に通所する選択もあります。就労に向けて自分に必要な経験・スキルを積んだり、配慮ある職場への就職を目指す・就職後もサポートを受けながら安定して働くことを目指していくための場所です。
私が住んでいる県では、この1-2年でも就労移行支援の機関が増えている様子。
それぞれの就労移行支援事業所によってカリキュラム内容や特徴が異なるので、通所可能なエリアの就労移行支援をいくつかピックアップして実際に就労相談をしたり事業所見学をし、自分にあったプログラムや雰囲気の合う事業所を選ぶことが大切です。
ちなみに私は、5つの就労移行支援事業所に連絡をし、すべての事業所に就労相談と事業所見学をしてから自分に合う就労移行支援事業所を決めました。
就労移行支援とは
就労に困難を抱えている方のために、一般企業への就職を目指していくためのサポートを行っているところです。
利用するためには、診断を受けた医療機関の医師より「意見書」または「診断書」などを頂き、それをもって地域の福祉課などに申請。申請が通れば利用することができます。
利用料については前年の世帯収入に応じて区分されます。
*LITALICOワークスさんホームページより
訓練期間は最長で2年間。週5日の通所を目指してカリキュラムを受けながら働く基礎を整えたり、応募書類作成・面接対策、個別面談、企業訪問への同行などのサポートをうけ就職を目指します。就職後は定期的に面談などのサポートを6カ月受けることができ、それが経過した後は最長で3年間の定着支援を受けることができます。
訓練の内容は機関ごとに内容・特徴が異なりますが、通所することで生活指導・ストレスマネジメント・ソーシャルスキルマネジメントなどのプログラムを学んだり、WordやExcelなどのビジネススキルを学んだり、中にはITに特化して学ぶことができる事業所もあります。
たとえば、このような就労移行支援を行う中でも上場しておられて規模も大きくされているのは
さん。
私が実際に見学訪問したLITALICOさんの事業所では、公認心理士の資格をもった方が施設の責任者をして管理される環境の中で運営されていました。サポートしてくださるスタッフの方も、異業種からの転職されてきた方もおられ、いろんな社会経験を生かして一般企業への就労サポートをされているのかなと感じました。
また、同じように上場されている就労移行支援機関さんには
お仕事復帰や自立を全力サポート | 就労移行支援のCocorport(旧社名:Melk)さんもあります。
Cocorportさんでは500種類以上の多種多様なプログラムを提供されており、 特に、就職後の安定した職場定着を見据え、 コミュニケーションスキルやストレス耐性を身に付けるトレーニングに力を入れておられます。 多くのプログラムが受講できることで、WordやExcelなどのビジネススキル、ビジネスマナー、SSTなどのグループワークを通して、自分の課題を見つけ対策を取れたり就労の準備ができるのは魅力的です。
障害があるなどのために
- 仕事が長く続かない
- 人間関係が苦手
- ストレスの対処法がわからない
- 働く自信がない、怖い
- 働きたいけれど何から始めればいいのかわからない
- 企業に就職するスキルを身に着けたい
- 自分にあう仕事や職場をみつけたい
- 面接が不安、応募書類の書き方で困っている
と悩んでおられる方は、
就労移行支援の
障害者のための就労移行支援事業所 LITALICOワークスさんなどにまずは就労相談をしたり、実際に事業所見学をしてから自分に合う就労移行支援を選び、そこに通所しながら就労を目指したり、
障害者手帳を取得できてからは、大手企業の障害者求人の取り扱いをされている
障害者の就職・転職なら【dodaチャレンジ】さんに登録して、障害者雇用がある企業紹介も受けながら就職活動を進めていかれてはいかがでしょうか。
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